高齢化社会の「届け方」改革。なぜ今、アナログ世代に「ハガキ」と「ショートメール」が響くのか？

私たちは今、歴史的な転換点の真っ只中にいます。

総人口に占める高齢者の割合が急速に高まる「高度高齢化社会」と、誰もが手のひらの上で

世界と繋がる「超デジタル化社会」が同時に進行しているのです。

内閣府の調査でも、60代で9割以上、70代でも8割以上がスマートフォンを保有する時代と

なりました。

この流れを受け、企業の広告宣伝活動も急速にデジタルシフトしています。

若者文化の象徴であったSNSは今や全世代に浸透し、各企業はこぞってSNS広告やインフル

エンサーマーケティングに予算を投下し、顧客との新しい接点づくりに躍起になっています。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか。

スマートフォンの普及率＝SNSの活用度、ではありません。

特に、長年「アナログ」な情報伝達に慣れ親しんできたシニア層、いわゆる「アナログ世代」

へのアプローチにおいて、私たちは大きな見落としをしている可能性があります。

デジタル化の光が強ければ強いほど、その光が届きにくい影もまた、色濃く生まれています。

「うちの親はスマホを持ったけど、LINEはやっていなくて。

でも、ショートメール（SMS）は頻繁に使っている」

皆さまの周りでも、このような話を聞いたことはないでしょうか。

多くの企業がLINE公式アカウントやInstagramでの情報発信に注力する一方で、実は多くの

ご年配の方が、LINEのように「ショートメール」を活用しているという実態があります。

なぜ、LINEや他のSNSアプリではないのでしょうか。

理由はシンプルです。

導入の手間がない： スマートフォンを購入した時点で、電話番号さえあれば
「ショートメール（SMS）」は特別な設定やアプリのインストールなしに利用できます。
操作が直感的： 機能が「メッセージを送る・受け取る」に特化しており、非常にシンプル
です。
スタンプや着せ替え、タイムラインといった多機能性がない分、電話をかける感覚に近い
手軽さがあります。
安心感： 知らない人から無差別に繋がったり、意図せずグループに参加させられたりする
不安が比較的少ないと感じられています。

彼らにとってスマートフォンは、SNSで社会と繋がるためのツールである以前に、まず「電話機」

の延長線上にあるものです。

だからこそ、その電話番号という回線を使ってメッセージを送受信できるショートメールは、

アナログ（電話）とデジタル（メッセージ）が見事に融合した、非常に合理的なコミュニケー

ションツールとして選ばれているのです。

企業がこの「静かなるSMS活用層」の存在を見過ごし、流行のSNSアプリでの発信だけに注力

しているとしたら、それは貴重な顧客層への大切な「通知」や「案内」を届けるチャンスを

逃していることに他なりません。

もう一つ、忘れてはならないのが「紙媒体」、特に「ハガキ」の力です。

「今どきハガキなんて、コストもかかるし時代遅れだ」

そう考える方も多いかもしれません。

しかし、デジタル情報が洪水のように押し寄せる現代だからこそ、物理的な「モノ」として届く

ハガキの価値は相対的に高まっています。

考えてみてください。

私たちのメールボックスやSNSのタイムラインは、日々どれだけの情報で溢れかえっているで

しょうか。

重要な通知も、広告メールの渦に一瞬で飲み込まれ、開封すらされずに消えていきます。

一方で、ハガキはどうでしょう。

物理的な存在感： ポストに届いたハガキは、必ず一度は「手」に取られます。
この「手に取る」という行為が、デジタル情報にはない最初の確実な接点となります。
一覧性： 封筒と違い、開封の手間がなく、受け取った瞬間に「誰から」「どんな内容か」
が目に飛び込んできます。
保存性と信頼感： 大切な通知（健康診断の案内、契約更新、同窓会のお知らせなど）は、
デジタルデータよりも「紙」で手元に残しておきたいという心理は根強くあります。
特にアナログ世代にとって、「紙で届く＝公式で重要な案内」という長年の経験則と信頼感
があります。

EメールやSNSのメッセージが「流れゆく情報」だとしたら、ハガキは「留め置く情報」です。

特に高齢者の方々にとって、慣れ親しんだハガキというフォーマットで届く案内は、他のどの

デジタルツールよりも高い開封率と熟読率、そして何よりも「安心感」をもたらすのです。